3月27日区議会本会議最終日に、日本共産党大田区議団がくらし・福祉・営業支援で好循環の予算への転換を提案して行った討論です。
日本共産党区議団を代表して、第1号議案 2012年度大田区一般会計予算、第2号から第4号の各特別会計予算に反対の討論を行います。
まず、第1号議案 2012年度大田区一般会計予算についてです。予算案は総額2264億4千万円余で、前年度比44億3千万円余、1.9%の減額予算となりました。区長は、2012年度予算編成について、「社会保障関係費の増大、待機児解消施策や防災力の強化、道路や橋りょうの維持更新に係る経費など、財政需要が増大する一方で、特別区民税などの基幹財源が3年連続で減少するという厳しい状況の中で、昨年に続き、一般財源で5%マイナスシーリングを掲げ、予算編成を行っている」と表明されています。予算の概算要求にあたって、前年度よりマイナス5%予算を要求限度として予算編成を行ったことで、区民の暮らしや営業に係る分野に昨年に続き大きな影響を与える予算案になっています。
新年度予算案には、小児緊急医療支援事業、高齢者肺炎球菌ワクチン助成の拡充、都市型軽費老人ホームの整備、障害者総合サポートセンターの設置・建設、待機児童対策の充実に認可保育園建設、耐震診断・耐震助成事業の拡充、区立保育園・民間保育所・福祉避難所の防災備蓄物品の確保、住宅リフォーム助成の拡充、大田区総合体育館の災害時の物資の集積所や帰宅困難者対策や避難場所としての活用など区民の声や党区議団の提案に応えたもので、評価できます。
しかし、新年度予算案は全体として、今、民主党・野田政権が進める暮らしと営業、日本経済破壊の「社会保障と税の一体改革」の政治に追い討ちをかける内容となっています。
反対の第一の理由は、くらし・福祉・営業切り捨ての予算となっていることです。予算案で縮小・廃止などにより見直された事業は95にもおよびます。
福祉費は、前年度比19億円余、1.66%の増ですが、その主な内容は生活保護費が19億円余の増です。その一方、今年度も多くの事業が縮小・廃止になりました。
まず、民間の賃貸住宅が老朽化し取壊し等で転居を余儀なくされた、高齢者・障害者・ひとり親家庭等の社会的弱者支援となっている住み替え家賃助成が廃止されました。
高齢者を支えるネットワーク~高齢者見守り体制の充実が図られたのは前進ですが、電話訪問は廃止、福祉電話・準福祉電話は、大幅に減らされました。一人暮らしの高齢者の生活見守りに役立ってきたのですから、高齢者の安心のためには二重の見守りのシステムをつくるために継続すべきです。
出産子ども一時金は、国保の4万円増の常設化を理由に廃止となります。実施してきた23区中5区のうち大田区を除く4区は継続するのに、大田区のみが廃止で少子化に逆行することになります。
生活保護受給者への入浴券を50枚から30枚にし、1週間に1回分の入浴券を配布していたのを、2週間に1回分にすることは人権上も問題です。憲法25条で保障された「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」にも反します。70歳以上の区民を対象にした「いきいき入浴事業」も年間利用枚数を60枚から36枚に減らし、利用者負担を150円から200円へと内容が後退します。当初見込んだより、利用者が多かったことから事業存続のために区民への負担増で継続するとのことですが、区民から歓迎されている事業ならさらに予算を増加して続けるべきです。
また、産業経済費は、前年度比で5千万円余、0.55%の増ですが、その主な増加分は、東糀谷6丁目工場アパートの借り上げ使用料の1億9千万円余です。この工場アパート分の増加にも係わらず産業経済費は、33億円余で予算案全体のわずか1.47%です。この予算では、不況に苦しむ区内ものづくり製造業は守れません。
反対の第二の理由は「民間でできるものは民間へ」と、民間委託、指定管理者制度をすすめ、多くの官制ワーキングプアをつくり、特別区民税の減収の原因となっていることです。
いま、行われている、賃金を引き下げたり、非正規雇用を増やすことや、下請けや納入業者の単価を引き下げることは、個々の企業にとってはコストを減らし、企業の「体力が強化されるように見えます。ところが、日本中の大企業が同じことをやれば、国民の所得は大きく減り、経済の約6割を占める家計消費を冷やし、不況の悪循環に陥ってしまいます。大田区が行っている民間委託や指定管理者制度も先に述べた悪循環を区政に持ち込んでいます。
不安定雇用を生み出す指定管理者制度は103施設になりました。大田区は、委託の理由を「民間のノウハウを活用する」「サービスが良くなる」と説明していますが、働いている人の多くが不安定雇用と低賃金のワーキングプアであり、結局大田区が大量に生み出した低所得労働者によって支えられています。これでは、区民の所得が減り、区民税の減収を作り出す、デフレスパイラルを大田区みずから作り出していることになります。今、大田区がやることはこのデフレスパイラルからの脱却と抜本的な転換をすることです。
一方では、賃下げに対して、生活できる賃金をはじめ、人間らしく働くことのできる労働条件を保障する「公契約条例」の運動が広がっています。公契約の条例制定を大田区でも行い、区が発注する仕事での労働条件と労務単価の底上げを図るべきです。
予算案に反対する第三の理由は、区民には財政が大変といいながら大規模開発は聖域にして大幅な予算増になっていることです。都市整備費が前年度比、34億円増で款別最大の伸びとなりました。区税収が伸びない中で区財政に大きなしわ寄せになっています。
特に、連続立体事業費の京浜急行関連駅周辺のまちづくり事業で前年度比、38億円余増、85.5%の増となっています。その中身の一つ、京急蒲田駅西口再開発が2013年度着工となり、本格的な立ち退き・解体に向けて計画がすすめられていますが、総額193億円のうち120億円以上が国や東京都・区の負担となり、来年度以降さらに区財政を圧迫することになります。
加えて、蒲田駅周辺のまちづくりに4905万円、大森駅周辺のまちづくりに1946万円、新空港線(蒲蒲線)整備促進事業には1047万円と続き、更に空港跡地に係る調査に2290万円、国際戦略総合特区推進事業に400万円と調査や計画だけでもこれだけあるのに、本格実施されると莫大な税金投入になります。
今、政府は消費税の10%以上への増税を画策しています。消費税の大増税は国民の暮らしに大打撃を与え、日本経済をどん底に突き落とし、国と地方自治体の財政をも破たんさせる暴挙です。断固反対です。日本共産党は、社会保障の再生・拡充と同時並行で、国民の所得を増やし、経済を内需主導で安定した軌道に乗せる民主的経済改革を行い、日本経済の好循環への転換を提案しています。そのために、①人間らしく働ける労働のルールを確立し、国民の所得を減らす雇用政策から、安定した仕事を保障し、雇用は正規雇用があたりまえのルールを確立し、最低賃金を抜本的に引き上げるなど所得を増やす雇用政策へ転換。二つ目に、中小企業を日本経済の「根幹」にふさわしく位置づけ、中小企業と大企業の公正・公平な取引ルールをつくりなど本格的な振興策を実施する。三つ目に、農林水産業を再生させ、食料自給率を抜本的に引上げる。四つ目に、安心の子育て社会を目指し、仕事と子育ての両立ができる社会基盤の整備や子育ての経済的負担を軽減するなどして少子化問題の危機を打開する。などの提案です。
ムダを一掃する財政改革、富裕層と大企業に応分の負担を求め、「応能負担」をつらぬく税制改革、「ルールある経済社会」をめざす経済改革を、段階的に、また一体的にすすめることこそ、社会保障の再生・充実、財政危機打開に向けた財源をつくりだす経済の好循環を生み出すことができます。
予算特別委員会で、各党から、生活保護費、扶助費の増額をいかに抑えるかについて、多くの意見がありました。不正受給対策や、就労支援を強めても生活保護対策の根本的な解決になりません。生活保護世帯の増加は国の政治の反映です。2009年の日本の貧困率は16%に達し、年々悪化しています。最低賃金はほとんど上がらず、非正規労働者は増え続け、失業者も高止まりしています。本当に生活保護が必要な人も受けていない状況で、他国の保護率から見ても低い受給率になっています。生活保護申請は権利です。生活、命、雇用が個人の責任や相互の助け合いでは守ることができない時、国や自治体が責任を持つ社会保障制度で守るほかないのです。憲法25条に基づく社会保障を目指す時です。
以上予算案について述べてきましたが、党区議団は歳出から無駄な事業を廃止し、高齢者住み替え家賃などの廃止事業の復活、高齢者の医療費助成、認可保育園と特養ホームの増設、中小企業支援の大幅な拡充など暮らし、福祉、営業を守る予算組み換え動議を本会議に提出しました。69億7321万円余の増額予算の編成替えの提案で区が苦しい区民の暮らし・福祉・営業の立場に立てば十分に実行可能な内容です。日本共産党区議団は引き続き実現させるためこれからもがんばります。
日本共産党区議団が予算特別委員会で提案した課題について要望しておきます。防災対策の拡充、同和相談員の廃止、保育園待機児童対策について、区立保育園の民間委託は中止すること、外部委託事業のモニタリングには社会労務士参加で労働条件の改善を図ること、公営住宅の増設、母子栄養支援を廃止せず継続すること、新空港線「蒲蒲線」計画は撤回すること、放射能対策の充実、中小企業支援の充実強化、特別融資制度の改善、国体カヌー競技の入札改善、小中学校に図書室司書の配置をすること、介護保険制度の改善をなど区民の切実な声や要望にこたえることを求めます。
次に第2号議案 大田区国民健康保険事業特別会計予算は、区民には16年で13回の値上げになるなど、高い保険料が区民に重い負担になります。今年度から旧但し書き方式での保険料算定になり、所得の低い世帯や家族の多い世帯、障害者の世帯に特に重い負担となる仕組みです。滞納世帯も3割を超えている中でこれ以上の保険料の値上げは区民の命と健康悪化につながる重大問題で反対です。
次に第3号議案 大田区後期高齢者医療特別会計予算は、4月からの区民の負担は平均年額で8731円の増になります。後期高齢者医療制度は高齢者の増加に伴って保険料額も増えるしくみとなっていること、年齢で医療内容を差別するしくみです。民主党政権も制度の廃止を公約しており、早期の廃止こそ区民の願いで反対です。
第4号議案 大田区介護保険特別会計予算は、値上げであり反対です。介護保険制度が導入されて10年になります。3年ごとの見直しで基準額は月額3070円から4900円へ、1.6倍の値上げになっています。高齢者は、年金が引き下がり、後期高齢者医療保険料、病院の窓口負担増などたいへん苦しい生活状況です。さらに、介護保険料が値上げになればますます介護保険制度を利用したくても利用できなってしまいます。大田区は、介護保険準備基金を取崩して値上げ幅を抑え、所得段階別保険料額の更なる細分化などを行い実態に見あった保険料設定を行うなど、高齢者の命と健康を守る立場に立つことを求めます。以上で討論を終わります。